投資家にもよるが、利率が低い「トリプルA」よりも、少し安全度が落ちる「シングルA」か「トリプルB」程度で、利率のやや高い債券の方が喜ばれるようだ。
債券の新規発行が決まったら、セールスマンは顧客に発行内容を説明し、あらかじめ買い注文を取る。
彼らはこの時、フル回転しなければならない。
主幹事の金融機関は、とくに発行企業に対して、その受注量で販売力を示す必要がある。
発行規模を上回る注文が集まれば、しめたものだ。
逆に、注文が発行金額に満たないとなると、主幹事の面目はまるつぶれとなり、発行企業の信用を失う。
顧客ごとに割り当て額が通知されると、フロアは騒然となる。
自分の顧客への割り当て額に不満をもつセールスマンが、血相を変えて、担当者のところにどっと押しかけて来る。
日ごろのなごやかな雰囲気は、どこかに吹き飛んでしまって、周囲が殺気だって投資銀行の職場が戦場と化すのは、いよいよ債券の発行条件が煮つまり、集めてきた顧客の注文に対して、最終的な割り当てを決める日だ。
人気のある債券ほど、どう顧客に分配するか担当者は頭を悩ます。
セールスマンは皆、人気のある債券を少しでも多く自分の顧客に販売したい。
そのために必死になる。
それは顧客のためだけではない。
自分の営業成績になり、年収に直結し「何言ってるんだ。この債券は人気が高く、発行金の二倍の申し込みがあったんだ。客にそう説明して納得させろ」て来るのだ。
割り当てを決めた担当者も負けずに言い返し、セールスマンを追い返そうとして、激しい口論となる。
どうしても収拾がつかない時は、部門のトップである重役クラスが割って入り、仲裁しようとするが、セールスマンは容易に引き下がらない。
シティのイギリス人たちは、ふだんはのんびりしているようでも、ここ一番というところでは、自分の職務に全力をあげて立ち向かう。
その迫力は凄い。
彼らは力の入れ方の強弱というものをよく心得ている。
朝から深夜まで、一本調子に仕事をする私たち日本人と、そこが決定的に違うのである。
能率と客観的評価が支配する大人の世界時間の観念の話をしたい。
イギリス人の社員はよく遅刻する。
これには、ひとつ理由がある。
電車が遅れるのである。
イギリスの通勤電車や地下鉄の時刻表ほどあてにならないものはない。
時間通り来ないし、走らない。
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